【仏教讃歌】 仏教讃歌とは、仏教音楽のひとつです。広義には、伝統的な声明や御詠歌などを含みますが、一般的には、西洋音楽の書法に則った明治期以降の作品をさします。(ウィキペディアより) 仏教讃歌について、山田耕筰が相愛学園(大阪の宗門校)発行の『仏教の聖歌集』の巻頭で「仏教聖歌(讃歌)の誕生はおそらく1918年(大正7年)1月であろう。私はその前年の暮れもおしつまった頃渡米の途に上がったのであるが、不幸にして船中瀕死の病を得、北米直行を断念してホノルルに上陸、門弟沢康雄(恩徳讃旧譜の作曲者)の勧めによって西本願寺ハワイ別院の客となったのである。私はその滞在に於いて健康を取り戻したばかりでなく、全く思いもよらぬ仏教聖歌の作曲者としての栄誉をも得たのである。」と記しています。 このように、アメリカに演奏旅行のために船旅をしていた山田耕筰が、船中で病気になり、途中、弟子である沢康雄がいるハワイに立ち寄り、療養しました。それが縁となって、山田耕筰も仏教讃歌を作曲するようになり、後に宗門校である相愛大学の初代音楽教授になるのです。 このページでは、仏教讃歌を、私、松井乗然が独唱しています。 |
(1)四弘誓願(しぐぜいがん) 四弘誓願とは、仏になろうとする菩薩が、最初に立てる四つの誓いのことです。 煩悩無数誓願断(ぼんのうむしゅせいがんだん) 法門無尽誓願学(ほうもんむじんせいがんがく) 仏道無上誓願成(ぶつどうむじょうせいがんじょう) それでは、四弘誓願をお聞き下さい。 |
(2)芬陀利華(ふんだりけ) 作詞は明治29年生まれで昭和34年往生の川上清吉です。島根大学教授など勤め、浄土真宗の開祖である親鸞聖人の教えを現代の人に紹介することに身を捧げた方です。 作曲は、山田耕筰です。「赤とんぼ」「この道」「からたちの花」など日本歌曲で有名な作曲家です。仏教讃歌も作曲しています。この曲もその一つです。 1、よしあしの間(はざま)を まよい 2、おおいなる みむねをうけて 3、世のひとの うちにすぐれて この歌の歌詞は、正信偈の中にある次のご文を歌にされたものです。
現代語訳(本願寺版:顕浄土真実教行証文類現代語版P145による) 善人も悪人も、どのような凡夫であっても、
「芬陀利華」とは、白い蓮華つまり「びゃくれんげ」のことで、古代インドの言葉「プンダリーカ」を中国で漢字にしたものです。 白蓮華は泥沼に育ちます。そこで真っ白な美しい花を咲かせます。 この白蓮華の教えでは、煩悩にまみれた世を泥水にたとえ、白蓮華を仏さまの教えに出逢った人にたとえます。 泥水のような世間の中から、仏さまの教えに出逢った人は、一滴の泥水の汚れもつけず、真っ白な美しい花を開花するという歌です。 この曲の一番では、よしあしの、つまり善悪の間を右往左往してまよい、何のより所もない「ただのひと(凡夫といいます)」が、御仏の「我にまかせよ。かならず救う」という誓いにあえば、芬陀利華=白蓮華になるというのです。 二番では阿弥陀様の慈悲に抱かれる身となることを「おおいなるみ胸をうけて」と歌われます。また白蓮華は「しらはちす」と表され、汚れた世間は「うつしよのにごりえ」と表されます。 そして三番では、この阿弥陀仏の教えに出遇えた人は「すぐれた尊き、この上もない人」と褒め讃えられます。 それでは、芬陀利華を歌います。 |
(3)恩徳讃(おんどくさん/歌詞:親鸞聖人ご和讃) この「恩徳讃」に付された曲は2種類あります。現在は清水脩(1911~1986)作曲のもの)が主流で「新譜」と呼ばれます。以前は沢康雄(1888~1932)が作曲したものがよく歌われていました。これは「旧譜」と呼ばれます。今から歌うのは澤康雄作曲の旧譜です。 澤康雄が「恩徳讃」を作曲した地は、ハワイです。20世紀初頭、日本からハワイへの移民が多くいて、その中には、真宗門徒が少なくなくなかったのです。 ハワイにおいて、真宗門徒はキリスト教会の音楽を聞き、西洋的な仏教音楽を求めるようになります。そこでそれに応じて、当時本願寺ハワイ別院に赴任していた澤康雄を中心に、さまざまな仏教讃歌が作られるのです。 前述のように、この沢康雄という人は、東京音楽学校(現東京芸術大学音楽学部)において、山田耕筰の弟子になります。 さて、この恩徳讃の歌詞は浄土真宗の開祖である親鸞聖人の御和讃の一つです。和讃とは教えなどを讃えた七五調の歌です。 恩徳讃は、浄土真宗では、法座や会合でみんなで歌う習慣があります。 その歌詞は
「身を粉にしても報ずべし」「ほねをくだきても謝すべし」という言葉があります。この「べし」は、強制や命令の意味ではなく、当然にわき起こるの意であり、「身を粉にするほどに感謝する心が起きるようになるなあ」「ほねをくだいてもよいほどに感謝する心が起きるようになるなあ」という意味であり、これは親鸞聖人ご自身のお心を歌われたものです。 |